リンパ浮腫と痛み
リンパ浮腫による痛みがでるかでないかは、リンパ浮腫になった原因や個人の既往歴、病歴によって左右されます。あるデータによれば、リンパ浮腫の痛みの頻度は9〜63パーセントと報告されています。このデータひとつをとってみても、いかに痛みの症状に個人差があるかがお分かり頂けると思います。
リンパ浮腫の中でも特に痛みがでる患者が多いのは、乳房切除後のリンパ浮腫です。乳がんなどにより乳房を切除した後のリンパ浮腫の患者22人を対象にして行われた研究において、痛みの表現の中で頻度の高かった言葉は、「張るような」「ずきずきするような」「熱いような」といったものでした。
リンパ浮腫の痛みの特徴としてあげられるのは、張って痛い、気温が高いと痛みがひどくなる、患肢を使うと痛みが悪化するなどです。さらに、リンパ浮腫の痛みは、神経が刺激されておこるような鋭い痛みである点も特徴としてあげられます。特に、短期間に急激にむくみが増強したような場合、細胞のすきまにあるリンパ液などの液体量が増加したことで、引き伸ばされた皮膚や皮下組織がジリジリ、チリチリと痛むこともあります。この状態がしばらく続くと、自然に皮膚の状態が落ち着いて痛みが消えますが、これは、浮腫の増強に皮膚が慣れてくる状態ですから、痛みが消えたからといって安心せず早めに体をやすめるようにするべきです。
こうした痛みに対し、鎮痛剤はそれほど効果がなく、痛みの症状のあるリンパ浮腫の患者11人に対し、鎮痛剤を投与したところ、痛みが緩和した者はわずかに2人であったとのデータもあります。現状では、リンパ浮腫により引き起こされる痛みを緩和する画期的な治療法はないといえます。もっとも、痛みとは、単に感覚ではなく身体的心理的な体験であるともいわれます。あらゆる痛みは患者の気分や価値基準によって、その強弱が変わってくるものです。信頼できるセラピストや医師にサポートしてもらうだけでもかなり痛みの程度を弱めることができるのです。
そのほか、アロマオイルや音楽などでゆったりとリラックスできる環境をつくることも痛みを軽減するのに役立ちます。ただし、慢性的にいつも強い痛みを感じるような場合、坐骨神経痛、悪性腫瘍などによる神経圧迫、手術による神経障害など、リンパ浮腫以外の原因による痛みである可能性もあります。こうした場合は、痛みを我慢せずにはやめに医師の診察を受けるようにしてください。